読売新聞1月27日朝刊の13面(解説と提言)に 「基本ソフト組込み販売 見直す声」と題した関連記事

 

基本ソフト組み込み販売 見直す声

 ことのおこりは米国のパソコンユーザーグループ。同グループは、パソコンにマイクロソフト社のOS「ウィンドウズ」が最初から組み込まれていることに反発。OS代金の払い戻しを二月十五日(米国時間)に一斉に要求しようと、インターネットのホームページで呼び掛けている。

参加資格は「ウィンドウズ」が搭載されているパソコンに、自分で「Linux(リナックス)」などの別のOSを搭載し、「ウィンドウズ」を全く使っていない場合に限られる。  論拠は、マイクロソフトがソフトウエア試用にあたって利用者の了解を求める「使用許諾契約(EULA)」。使い手が同意しない場合は使用を許諾しないが、返品すればその分の代金を返すとしている。

 ホームページでは、オーストラリアの男性が、「EULA」をたてに日本のパソコンメーカーからOS代金を返還させた体験談や、買ったばかりのパソコンの「ウィンドウズ」を使わずに別のOSを組み込む方法なども掲載している。

 マイクロソフトは「OSを取りはずせば、パソコンの機能の一部が使えなくなる。マイクロソフト嫌いの一部マニアたちの嫌がらせだ。我々が直接消費者に売ったわけではないので、どう対応するかはパソコンメーカーの問題」としている。

戸惑うメーカー

 パソコンメーカーは、想定していない動きに戸惑いの表情だ。代金返却に応じたと名指しされたメーカーは「事実関係を調査中だが、本来はありえないこと。OSを抜けば、製品保証ができない」と言う。
他メーカーも「未使用のパソコンを送り返せばパソコン代金を返す」「ソフトはパソコンの一部品なので、そのまま使ってもうらうしかない」など、対応を検討中だ。

 こうした運動が起こる背景には、マイクロソフトの販売手法を巡る米国の裁判がある。審理の過程で「自社の応用ソフトを組み込んで販売するようパソコンメーカーに強要した」「メーカーによってOSの値段に差をつけている」「OSの価格が高く、パソコン製造費に占めるOS価格が六年間に0.5%から2.5%に膨れ上がった」などがマイクロソフトの社内文書などから明らかにされ、使い手の側の反発を呼んでいる。

 マイクロソフトは「機能向上に見合う価格を付けている」などの反論をしているが、返還要求運動は新たな頭痛のタネになりそうだ。

 今回、対象になったのはOSだが、国内の個人向けパソコンにはワープロ、表計算、スケジュール管理などの多数の応用ソフトが組み込まれている。一本ずつ買うよりも安くて便利な反面、好みのソフトを選べない問題もある。不要なソフトもパソコンの記憶装置を占領しているため、自分で新たにソフトを組み込むと記憶容量不足になる場合もある。しかも不要ソフトの削除はそう簡単ではない。

販売手法に問題

 パソコンに詳しいノンフィクション作家の中野不二男さんは「パソコン本体とソフトを分けて売るのが本来の姿だが、組み込んで売る場合は、消費者がもっと選べるようにするべきだ」と、パソコン販売手法の問題点を指摘する。メーカー側にも、見直す動きもあるが、大勢はまだ変わっていない。

 今回の返還要求は、ごく一部のパソコンに習熟している人たちの動きで、普通の人がすぐに同調できるものではない。だが、「ソフトは自分が何をしたいかに合わせて選ぶもの」という問題を改めて提起するきっかけにはなるだろう。

(Ponさんありがとうございました)